2014年10月1日水曜日

東洋人て誰のこと? オリエンタル・カレーの歌

オリエントというのは陽の昇る地域を示す言葉で東アジアのことだとずーと思っていた。子供の頃にテレビでオリエンタル・カレーのCMソングを流していた。「懐かしい、懐かしいこのリズム、エキゾチックなこの調べ、オリエンタルの。。。」  カレーは昔も今も大好きだ。海外出稼ぎを繰り返してきたが日本のカレールーの味は本場のものとも違って独特だし、こんなに美味しい肉野菜の煮込みは世界に誇れるものだ。

30歳を過ぎて初めての海外経験でアメリカの古都フィラデルフィアに住んだ。独立宣言や自由の鐘で有名な街だ。ここに大学院があって2年間お世話になった。若気の生意気さで「金勘定するよりは、何か世の中に立ちたい」と思っていたので、電力会社に務めていた。留学のチャンスが回ってきた時も当時の流行の「てっとり早く金持ちになる方法を学ぶビジネス・スクール」ではなく、公共政策を学びながら国際関係史の授業も取るつもりで「ガバメント・スクール」という分野を選んだ。今は少し違う見方だ。世の中を渡る道具と技を身に着けるのが先決で世の中の役に立つのはそれからの話かも知れない。

クラスはほとんどがアメリカ人で国務省の役人を目指す人が数人、弁護士になる前に行政をちょっとかじろうというタイプが数人、米国援助庁(USAID)とか開発分野を目指すタイプも数人、行財政を学んで公共セクターのコンサルタントをめざしたり、州政府の役人を目指す学生とかがいた。何故か留学生が3人いて韓国の外交官が二人、一人は自分である。アジア人同士ということで3人はなにかと寄り集まる仲良しだった。二人ともパークさんで、一人は言語学の博士課程で勉強する奥さんを追いかけて来た人で人当たりのよい外交官の卵。もう一人はジャーナリスト出身の外交官の変わり種で将来は政治学者になることを目指してこの学校を選んだ人だった。

3人で勉強の息抜きにビールを飲んで盛り上がった時に「この米人ばかりのクラスで3人が一緒になったのも何かの縁ではないか。これからも3オリエンタル・ボーイズとして結束しようぜ」と気勢をあげた。感じの良い方は「そうだ。そうだ」と同調してくれた。もう一人の学者志望の方はにやりとしながら「仲良しは良いが、おれたちはオリエンタルじゃないぞ」とのたまった。「何がいけない?」と聞くと「オリエントっていうのは欧州にとっての陽の昇る地域である中近東を示す言葉だ。おれたちはその最果てのファーイースタンだ」。

その時は、もっともな指摘だが、ビールで乾杯するのを邪魔することもないのにと思った。1991年に日本を離れてからヨーロッパや旧ソ連圏の国々で長く働いてきた。こちらに住んでいる人々の多くにとって陽の昇る土地に住むアジア人が近くにいようが、遠くにいようが異邦人であることに変わりはない。自分が異邦人として長く外国に住んでみるとそんな風にまとめてもらっては困るような気がしている。 フィラデルフィアの芝生の上での会話を時々思い出す。今なら違いを指摘してくれた友だちと美味いビールが飲めるような気がする。

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