2015年8月2日日曜日

五藤利弘監督の故郷映画 ロケ地めぐりの思い出

今年の8月3日に五藤利弘監督と一緒に栃尾を舞台にした映画のロケ地を回るツアーがあるそうだ。地元応援団のTさん、栃尾出身のMさんなどの発案らしい。この日は長岡祭りの2日目でもある。日本一の大花火と組み合わせてのツアーが計画されたようだ。素敵なアイデアだ。わたしも参加したいところだが、今年の夏はロンドンでいろいろやることがあって帰省していない。まあどこにいようと「ゆめのかよいじ」 経由で参加できるから良いかと自分に言い聞かせている。

わたしの郷里である長岡市出身の五藤利弘監督のことを知ったのは去年の春頃だ。長岡高校同窓生のフェースブック投稿だったと思うが、栃尾を舞台にした映画があることを知った。Youtubeで短い紹介を観るだけだったが、栃尾を舞台にした映画ということでとても懐かしい感じがした。2014年8月に五藤監督にお会いする機会があったので「今のようにご自分の作品を撮れるようになるまでの修行時代は助監督としてどういう活動をされたのですか」と質問すると「脚本を書いていたので助監督は経験していません」という返事だった。抒情的なファンタジーと物語にこだわる五藤監督の作風もそれで納得できる。同じく8月に映画「ゆめのかよいじ」の舞台を訪れた。今は長岡市の一部となった上杉謙信ゆかりの栃尾がメインのロケ地だ。栃尾で生まれ育った長岡高校同級生のA君と一緒に回った。長岡市和島の旧島田小学校も映画に出てくる。こちらは高校同窓のSさんに案内していただいた。

映画「ゆめのかよいじ」で印象に残るのが長岡市の栃尾を流れる刈谷田川の河原で平たい石を卒塔婆のように積みあげる「石積み」という場面だ。この川はこちら岸の世界とあちら岸の世界を隔てるものの象徴でもある。この映画は彼岸に住む人と現在を生きている人との交流をテーマにした物語を原作にして、長岡市の山河を舞台に撮影された。河原と栃尾の山の緑が繰り返し出てくる美しい映像にこの「彼岸」のイメージが見事に表現されている。「人を想う気持ち」というのはどこかラジオの周波数を連想させるものがある。この映画のヒロインは亡くなった父を慕う気持ちから「心が風邪をひきそう」になった高校生だ。父と過ごした時間を思い出すたびに父の好きだったピアノの曲が流れる。このヒロインからとても強く発信されている「思い」が60年前のある出来事につながって行く物語だ。

「モノクロームの少女」も監督ご自身による脚本作品で、長編としては第1作にあたる。シナリオライターを目指して若い頃から温めてきたらしい様々な想いが映画の前半に盛り込んである。好きだった女の子への想いであり、気になる友人であり、郷里の日常がある。憧れの対象としての東京があり、そこへの脱出の手段としての受験がある。このあたり監督の昔の日記を読んでいるようだ。この映画は後半に入ってテンポが速くなる。駆け落ちした異国で病没したモノクロームの写真の女性と、その後生きる気力を失くしたようにやはり早世したその恋人がいた。死後であっても一緒になりたいという逝った者たちの「想い」が若い主人公たちに乗り移って「悔いのない人生を生きろ」と呼びかける。ちょうど「ゆめのかよいじ」で二人のヒロインが共通して愛したピアノ曲が彼岸と此岸に立つ者たちの想いをつないだように、「強く人を想う気持ち」を共有する主人公たちにしか見えない形でこのファンタジーが成立する。熱い気持ちが伝わる青春映画だ。

それから「スターティング・オーヴァー」、「愛こそはすべて」、「花蓮~かれん~」、「ゆめはるか」を含む長編6作に加えて、「鐘楼のふたり」、「ブーケ~a bouquet~]、「雪の中のしろうさぎ」などいくつかの短編作品も観る機会があった。それぞれブログに感想を書いた。これらの作品に共通しているのは、登場してくる人物たちの必死の想いに加えて、監督自身の様々な想いが込められた映画である点だ。すべての作品に納得できるわけではないが、熱い気持ちは伝わってくる。五藤監督は映画青年だった若い日の志を貫いて脚本家となり、監督業への道を自力で切り開いてきた人だ。企画・製作の段階から一人で奔走するところから映画作りが始まるので、様々な苦労があるらしい。人気の原作の映画化権を大手メディア会社が取得した上で、大きな予算と宣伝で「売れ筋の映画」を作るのとは別の話だ。

栃尾を舞台にした「ゆめのかよいじ」も「モノクロームの少女」のどちらも映像が美しい。生まれた土地だったり、大切な人をしのぶ場所だったりという理由で、ある風景が自分にとって特別な意味を持つということは時々ある。そういう場所がある時スクリーンの映画になっていて、風の吹いている感じや色彩のイメージが自分の心象風景のままだったりして感動した経験はないだろうか?ロケ地である長岡市の栃尾、刈谷田川、和島などに縁を持つ者にとっては、こうした映画が劇場公開され、日本中のツタヤにいけばDVDとして販売されていることが「奇跡」のように思われる。







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