2018年1月25日木曜日

仰げば尊し 菊地先生のこと

還暦を迎えた歳に記念の同級会があって再会を果たした先生から、賀状を頂戴した。「泰然、開拓、健康を心がけ、絵を深めていきたいと考えています」と書いてあった。雪の林を描いた先生の絵が印刷されていて一言添えてくださった。大学生になって東京で暮らしていた頃にいただいた賀状のことを思い出した。その賀状には黄色と緑の一輪の花の絵が印刷され、やはり一言添えてあった。「あの絵を思い出す。しんと静まり返った世界。」中学2年生の時の写生大会で長岡操車場から出て来る電車の絵を描いて県ジュニア展の奨励賞をもらった時のものだ。先生がその絵のことを覚えていてくださったのが嬉しくていまだに大切にしている。
 
近況報告を聞いてほしくなり、長い海外勤務を終えて退職したこと、写真の勉強をしていること、同郷の映画監督の映画パンフ作りの手伝いをさせていただいたことなどを手紙に書いた。これからの時間の過ごし方を模索していることを伝えたかったのだと思う。少し迷いのある文面を気にしてくださったのか先生から電話を頂戴した。先生は、ちょうど80歳になられたはずだが、とても若々しい声で「六十台は最高だよ。頑張りなさい」とアドバイスしてくださった。
 
謎めいた励ましの意味を探るべく、昨年頂戴した先生の日本画集を取り出してみた。先生の主要作品とそれらを振り返る文章が収められている。先生が還暦を迎えられて少し経った頃に新潟日報に連載された24枚の絵と文もある。その紹介文に「その頃、私はちょうど長い勤務生活から解放されて、写生に出かけたり、アトリエで絵を制作したり、雨の日は読書にふけったりできる仙人生活に入った時期でした。いわば人生のいっぷくの頃で、心静かに今までの道のりを振り返る良い機会でした」と書かれている。この先生の凄いのはそれからもずっと現役として絵を描き続けていらっしゃることだ。強く励ましていただいたように感じてうれしくなった。
 

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