2016年3月2日水曜日

スリランカの濃厚ミルク・ティーの記憶

子供の時からお茶は苦手だと思い込んでいた。タンニンが苦手なので、今でもお茶を飲む時は玄米茶とか番茶になる。抹茶入り玄米茶も美味しい。それでも忘れられないお茶の味の記憶がある。今朝の投稿でFB友だちが豆乳と英国紅茶が良く合うという話をしていたので久しぶりに思い出した。1980年代の中頃につれあいが青年海外協力隊員としてコロンボで働いていた時の話だ。つれあいからは「治安が悪いから来るのやめれば」と言われながらも美しい南の島というイメージに魅かれて、好奇心いっぱいでスリランカを訪れた。

飛行機から外に出た途端に大変なことになったと思った。暑さが半端でない。湿気もあるし、何やら気持ちの悪い匂いもする。この島の人たちが料理に使うココナッツオイルの匂いだった。パスポートコントロールと税関を通り抜けて辺りを見回したが、つれあいの姿がない。空港まで走ってくれるタクシーがなかなか見つからなかったそうで一時間近く空港の外で出迎えを待っていた。ひっきりなしに一癖ありそうなオジサンが話しかけて来る。「何処から来た?」、「何しに来た?」、「あんたの友達は来ないよ」 延々と話しかけてきた。暑苦しい空気の中で、しつこいオジサンだった。

ようやくつれあいが到着し、40分くらいの道を古いタクシーで走ると民家風の宿にたどりついた。マルコ・ポーロも訪れ、様々な紀行文で「インド洋の真珠」と絶賛される美しい島のはずなのに、どうも感じが違う。暑気に圧倒されて数日は観光する元気もなかった。2日ほど我慢したが、エアコンのない部屋に耐えきれずにゴール・フェース・ホテルに宿を変えた。こちらは英国植民地時代の名残たっぷりの豪華ホテルで古い調度品も庭も素晴らしかった。おまけに長く続いた内戦時代のことなので観光客も少なくて一泊30ドルくらいの格安料金だった。このほとんど観光客のいない5つ星ホテルのカロニアルな雰囲気たっぷりの庭で飲み物を頼んだ。炎天下の木蔭で飲んだ濃くて甘いミルクティーだった。あまりの美味しさに感動した。

炎天下でいただく甘いものの味は格別だ。それから数年経って開高健が炎天下で釣りをしながら食べた栄太郎の蜜豆の味について書いているのを読んだ時にしみじみと共感を覚えた。この小説家もいくつかの作品でスリランカの宝石の話を書いている。おそらくスリランカを訪れた記憶と本で読んだスリランカの記憶が混ぜ合わされているのだと思うが、わたしにとって美しくて幻想的な島だ。再訪したいかどうかは別の話だ。遠い記憶の中で大切にしまっておきたい場所になっている。