2015年2月9日月曜日

中央アジアのヴォトカの飲み方 

日本からの旅人が中央アジアで顰蹙を買うことの一つにヴォトカの飲み方がある。豪快に飲む地元の皆さんに付き合うつもりで、日本酒を飲むみたいにちびちび飲む人がいる。これは地元のエチケットに反している。ヴォトカは乾杯とか飲み合いなど然るべきタイミングで飲むもので、ちびちび飲んではいけないらしい。つまみを食べたり、会話をしながら然るべきタイミングを待ち、飲むとなったら一気に喉に流す。冷凍庫で冷え冷えのヴォトカは旨い。

ヴォトカのように強い酒をぐいぐい飲むのに、地元の人はどうして平気でいられるのだろうかと不思議に思う。これには少しばかりコツがある。中央アジアではヴォトカには果実か野菜のジュースのチェイサーが常識だ。ヴォトカを呷ってから、すかさずチェイサーを一杯まるごと飲み込む。胃の中でミックスされれば、それほど強い酒を飲んでいることにはならない。つまみを食べながら飲むことで胃壁にゆっくりと吸収され、チェイサーで大量に水分をとることで体外に排出されてしまえばさほどの大事にはいたらない。上手に飲みさえすれば、蒸留酒であるヴォトカを飲む時のほうが醸造酒のワインや酒に比べて、翌朝の気分が清々しいことも多い。

中央アジアでは夏の太陽を浴びて完熟の果実やトマトなどの野菜を市場で売るなり、列車で運ぶなりしてもさばききれないことが多い。余ったものを無駄にしない知恵で、彩り豊かな各種ジュースの加工業が盛んだ。わたしの職場で支援している地場の中小企業でも湧き水をペットボトルにつめこむミネラル水工場とならんで、果実・野菜のジュース工場は多い。中央アジアの果実ジュースは種類が豊富なうえに、味が濃厚で美味しい。柘榴ジュース、桑の実ジュースなどはなかなか日本では飲めないので楽しいが、オレンジとかリンゴとか日本でも流通している果実ジュースと味を比べると甘すぎるのが難点だ。ボトリング工場を訪ねたときに、「いくら何でも甘すぎませんか」と文句を言ったら、甘くないと売れないという説明だった。地方に行くと冷蔵庫がない家も多いので、砂糖がきいてないと痛みやすいこともありそうだ。

タジキスタン北部の工業都市フジャントのジュース工場を訪ねたり、タシケント郊外のワイン工場を見学したのは懐かしい思い出だ。「このワイン甘いですね。何で砂糖入れるのかな?」と言った後で「日本も戦後は甘味が珍重されたけれど、やがて生活が豊かになると甘すぎないのが好まれます」と本音を言ってしまった。若い同僚はわたしをじっと見ると、「この国が貧しいから甘いのが好きということですか?それは言わないほうが良くないですか」と聞き返された。通訳が相手との間に入るとありがたいこともある。





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