2015年9月23日水曜日

「難民」が問題なのか?「移民」が問題なのか? 言葉の選択で終わる話ではない

7月の末にドーバー海峡トンネルの向こう側のフランスの港街カレーでフェンスを越えて英国へ向かおうとする人々について、英首相が「移民の群れから国境を守る必要がある」というコメントを出した。「群れ(swarm)」という表現を使ったことが批判されたが、英首相の意見に同調する人は多かった。8月になってBBCはこれまでの難民報道について「移民」という言葉を使ってきたことについて「どういう単語を択んだかではなく、どういう姿勢の報道がなされたかが大切だ」と釈明コメントを出した。その後溺死した難民の少年の写真が新聞に掲載されると英国の難民問題についての世論は様変わりした。

シリアや北アフリカから欧州への難民問題が、この夏に突然始まったことではなくて2011年のアラブの春以降の地中海・北アフリカ地域の不安定化の後で深刻化してきた問題であることを理解することは重要だ。それと同じくらいに、東欧・旧ソ連地域からの移民問題でEU地域が20世紀の末から揺れ動いてきたことにも注目する必要があるはずだ。1998-2000年に始まったEU加盟交渉を経て中欧・バルト地域の8か国がEU加盟したのが2004年だった。3年遅れでブルガリアとルーマニアがEU加盟を果たしたのが2007年だ。この時以来EUの拡大の動きは止まり、トルコ、クロアチア、マケドニア、アルバニアは加盟候補国になって10年近く経過したままだ。このEU拡大の動きを止めたのはEU諸国内部での移民問題についての不安の高まりだった。

ロンドンでも東欧からのホームレスの人々の問題が何度も取り上げられた。昨年11月にパリを訪れた時に同行の友人が地下鉄でひったくり被害にあったが、目撃していた仏人乗客の証言によれば犯人たちは東欧系の言語を話していた。その後の滞在でもパリの治安が悪化しているのにはびっくりした。現在の難民問題についての議論でEU諸国の立場が分かれている背景を理解するためには、問題が2011年以前から存在していることにも注意を払う必要がありそうだ。
http://www.bbc.co.uk/news/world-europe-34332759?ocid=socialflow_facebook

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