2015年10月12日月曜日

立原道造「萱草に寄す」と長岡高校のH先輩のこと

母校県立長岡高等学校のH先輩のブログが面白い。水彩画と建築と料理と友人の想い出などがテーマごとに整理されている。そのブログの一つに忘文というのがある。読み方が分からなくて調べてみると、大切な人に想いのたけを込めた文章を届けるTV番組からの命名のようだ。忘文はワスレブミと読み、忘草(ワスレグサ)にちなんだものらしい。倍賞千恵子も菅原洋一も歌った「忘れな草をあなたに」という歌の花であるワスレナグサとは異なっている。こちらの方はロンドンを離れる前に、声楽研究会の会合でも歌った懐かしい歌だ。

忘草は萱草とも書く。調べてみるとキスゲ亜科の多年草で、ニッコウキスゲなどに近い植物だ。音読みの「カンゾウ」という名前でも知られている。花が一日限りで終わると考えられたことからの命名らしく、はかない美しさの象徴とされている。夏の季語でもある。中国では花の姿から「金針」、憂いを忘れるとの意味で「忘憂草」とも呼ばれるそうだ。

立原道造という詩人が「萱草に寄す」という詩集を出している。この人の名前は知っていたが、詩集の読み方を知らなかった。今週帰国して立ち寄った書店で岩波文庫版の「立原道造詩集」を見つけたので、読んでみた。風や、木立ちや、小川の水面や、月をテーマにした抒情詩の世界だ。ロンドンを離れる前にたくさんの時間を過ごしたチズイック庭園やイザベラ・プランテーションの世界を思い出した。

この早逝した抒情詩人は建築家でもあった。水彩画で心に残る風景を描き続けるH先輩が建築家であることと共通している。H先輩の水彩画の個展が今年の12月に新宿で開かれる予定になっている。先輩からはすでに幾枚もプリントを頂戴しているが、オリジナルを見ることのできる貴重な機会になりそうなので楽しみにしている。





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