2016年8月13日土曜日

ロケット弾と竜神の話

1999年の春から2004年の秋までウズベキスタンの首都タシケントで、国連専門機関に勤務されていたHさんとご一緒した。ジャーナリストだったご主人から、わたしが働いていた組織と現地政府との関わりについて質問されたことがあった。当時は微妙な話題が多かったので、返答に困ったので覚えている。Hさんは、その後シリアの首都ダマスカスで勤務することになった。ある時に日本に里帰りして神社にお参りすると、シリアに戻ってからも竜神様のようなイメージが脳裏から離れなかったというのがご本人の記憶だ。ダマスカスのプールで泳いでいると後ろ5mほどのところにロケット弾が着弾した。「物騒なご時世に水泳か」と思う人もいそうだが、途上国の勤務では体力と気力の維持が大切だ。物騒な国だからこそ運動したり、歩いたりできる場所は限られる。ホテルの施設くらいしかない。ロケット弾が水の中で破裂したおかげでHさんは九死に一生を得た。Hさんは龍神さまのご加護だと思ったそうだ。

龍のイメージで鮮明なのは小学校の時に学校で上映されたアニメ「龍の子太郎」だ。童話作家の松谷みよ子さんが長野県の民話をもとに再構成したこの作品は1962年に国際アンデルセン賞優良賞を受賞した。山の仕事で疲れ果て、空腹で気が遠くなりそうだった太郎のお母さんは、川でとれた魚を焼いている内に仲間の分まで食べてしまう。その罰として龍の姿に変えられてしまう。残された太郎少年が、龍となった母を探し求める冒険物語だ。子供心にその魚が焚き火でジュウジュウ焼ける香ばしい匂いと、空腹に負けて一匹また一匹と食べてしまう場面が怖ろしい記憶として残っている。自分がそのような立場に立たされたとしたら誘惑に打ち勝つ自信がなかったからだ。極限状態に近い空腹を抱えながら、食べてはいけないというのも酷な話だ。

郷里である新潟県長岡市に高龍様という神社がある。上越線の宮内の辺りを流れる太田川の源流の辺りだ。見附の父が元気だった頃に一緒にお参りに行って交通安全のお守りをもらったことがある。このお守りはわたしが日本を離れて、様々な国を仕事で訪れるようになった時に必ず旅行のカバンに入っていた。コーカサスへの出張でも、中央アジアへの出張でも一緒だった。こちらの神社は「蛇」がご本尊だ。しぶとい生命力と根気強さから商売繁盛にご利益があるとされている。その昔は、長岡の厚生会館ホールなどで芸能人の公演がよく開催された。ヒット祈願などで高龍神社を訪れた有名スターも多いそうだ。父を思い出す場所になった。

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