2016年8月17日水曜日

2つの民話 たらい船を漕ぐ娘と山を越えて走る娘

寿々木米若の「佐渡情話」という浪曲は見附の父が元気な頃の持ち歌だった。懐かしいのでCDが書棚にある。柏崎の漁師が荒波で難破し命を落としかける。佐渡の人に助けられて、回復を待つ日々を過ごしている内に、助けてくれた人の娘と恋に落ちる。傷が癒えた若者は必ず迎えに来ることを誓って柏崎に帰っていく。その時に娘には赤ん坊が出来ている。その後紆余曲折があり、はらはらの連続だが、最後にめでたしとなる。 この話には別にオリジナル版があってそちらは不倫も裏切りもある凄い話になっている佐渡ヶ島の娘と海を隔てた柏崎の男の物語である点は共通している。かよわい娘がたらい舟で佐渡から柏崎まで渡ってくる怪力物語になっていることがすでに謎めいている。美空ひばりさんが歌った「ひばりの佐渡情話」はオリジナル版に近い悲恋物語をせつせつと歌うものだ。

長野県上田市に伝わる「つつじの乙女」という民話をもとにして松谷みよ子さんが1974年に「つつじのむすめ」という絵本を出版している。原爆の絵で知られる丸木俊さんが絵を描いた。民話を読んでみるとこれも凄い話だ。いくつもの山を隔てて住んでいる若者と娘が出会い、恋をする。若者に会いたい気持ちを抑えられない娘が夜になるといくつもの山々を越えてやってくる。この辺りは佐渡情話と共通している。娘は温かいつきたての餅を運んでくる。不審に思った若者が問い質すと、娘は手に握ったもち米が体の熱で餅になっただけだと答える。娘が異常な力を持っていること気がついた若者は怖ろしくなる。ついには疎ましくなって娘を谷底に突き落としてしまう。それからこの谷には真っ赤なつつじが咲くようになったという伝説だ。





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