2015年3月17日火曜日

船村徹「歌は心でうたうもの」 と みなみらんぼう「全曲集」2015

今年の始めに帰省した時に船村徹という人の「歌は心でうたうもの」というCDを買った。この人は作曲家だが、渋い声で自分の作った曲を歌っている。この人が美空ひばりに提供した「みだれ髪」という名曲がこの中に入っている。量産される歌謡曲が玉石混交となるのは仕方がないが、力のある歌手はそれでも名曲を残す。美空ひばりも心に残る名曲をいくつも歌っている。佐渡と柏崎に別れた恋人たちの悲恋をテーマにした「ひばりの佐渡情話」も良い歌だ。この歌の中に「島の娘はなじょして泣いた」という歌詞がある。越後の出身なので懐かしい。

雪国の人々は冬の寒さの中で口をはっきり開けないで言葉を発する傾向が強い。口数や語彙を減らして、目で語り、身体表現で語る世界だ。それで同じような表現が違う意味で使われることもある。郷里である長岡の同窓生たちのやりとりで、「なじょうも、なじょうも」という表現は今でも耳にすることがある。「なじょうも」は「どうしても。どうぞ、どうぞ。」と勧誘を示す。相手の発言に対して「いくらでも、どのようにでも」というところから「どうぞ、ご自由に。」と同意を示すこともある。「なじらね」(具合はどうですか?)と挨拶されて、「なじょうも」と返す場合には「どうということもないです」から転じて「元気です。」の意味になる。

雪国の「言葉に頼らない」という態度には、静かに酒を楽しむ男たちの世界と共通するものがありそうだ。みなみらんぼうという人がいる。この人は作詞・作曲の両方をこなして、自分でも歌う。とぼけたような、枯れたような声になんとも言えない味がある。この人の「ウイスキーの小瓶」、「途上にて」はしみじみしていい曲だ。この人がめずらしく他の人の歌詞に曲をつけたのが「男と女 昭和篇」という歌だ。阿久悠が作詞している。

   「酒は心を軽くして
    口を重たくさせるもの」
   「飲めば心が話すもの
    しゃべりゃ心が黙るもの」

みなみらんぼうの「全曲集2015」というCDの中に収められている。好きな歌だ。

0 件のコメント:

コメントを投稿