2015年4月13日月曜日

加藤節雄写真クラブと「大人のロンドン散歩」について

加藤節雄先生はロンドンで写真クラブを主宰されている。先月、郷里の大先輩で英国新潟県人会長の飯塚さんに連れられて、月例会を見学させていただいた。当日の参加者は15名ほど。「身近なものをクロース・アップで撮影して面白い写真をとること」がテーマだった。月例会ではそのテーマに沿って各人が撮影した写真を数葉ずつ持ち寄り、撮影者の意図と、参加メンバーの感想を交換する。その上で各人のその月のマイ・ベストの一枚を選ぶ。最後に加藤先生の審査でその月例会のベスト3を選ぶ。メンバー相互での意見の交換が面白い。4月から参加させていただくことになった。

4月11日土曜日の例会では「ショーディッチの壁の落書きを入れて写真を撮る」というのがテーマだった。それぞれが撮影した中から5枚を選んで来月の合評会に提出することになっている。ショーディッチに来たのは久しぶりだ。落書きというよりも壁に描いたポップアート風の絵が面白かったので、夢中でシャッターを押しまくった。家について見直してみると300枚近い。思ったよりもつまらない写真を削除して、70枚ほどに絞った。ここから来月の合評会に提出する5枚を選ぶのは容易なことではないが、楽しい作業だ。

ショーディッチからブリックレーンというのは今世紀になって再開発されるまでは倉庫街だった。今では若者の街だ。かつての倉庫を改造したようなカフェやレストランやギャラリーがたくさんあって楽しい。金融街シティーから少し東に進んだ辺りなので、職場のすぐ近くなのに、こんなに面白い場所だとは知らなかった。ロンンドンの新型トイレとか、ロンドンで一番美味しいベーゲルの店とかいろいろな発見があった。ブリックレーンの周辺はバングラディシュのカレー屋さんで昔から有名だが、その周辺が再開発されてべトナム料理、韓国料理、中東料理とエスニックレストランの花盛りとなっている。

加藤先生の「大人のロンドン散歩」という本が河出文庫に入っている。この本が出版されたのが2012年のことで、わたしがロンドンに2回目の勤務で戻ってきたのが2011年の暮れだ。わたしは1993年から1999年までロンドンに住んだので、この街はおおよそ知っていると思っていたが、この15年くらいで再開発で変わった部分も多い。ロンドンのガイド本はいろいろあるが、21世紀に入ってからの新しいロンドンについて書かれたものでは、おそらくこの本がベストだ。とても役に立つ情報がたくさん入っているありがたい本だ。

この本が何故面白いかといえば、1977年からロンドンに住んでいる加藤先生が本の題名通りに自分で歩いた場所や通りについての短いが的確な指摘に満ちているからだ。文章が視覚的な想像力を刺激するのもその理由だろう。これは加藤先生の写真クラブの会合に数回参加させていただいて、感じたことと共通のものだ。このクラブに集まってくる会員は月例会に写真を提出し、それを批評し合うのだが、自分の写真についても、他人の写真についてもその写真の「意図」を言葉にすることが求められる。「何を撮ろうとしたのか」、「何故面白いと思ったのか?」について考える訓練だ。わたしも、テムズ川周辺の池の水鳥の写真を撮りながら、リッチモンド公園のつつじを撮りながら、ショーディッチの壁の落書きを撮りながら、そういうことを考えるようにしている。


 


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