2016年5月29日日曜日

一枚の写真 狐の手袋

 ロンドンでの単身赴任時代と現在の生活の連続性を象徴する1枚の写真がある。当時住んでいた近所の風景だが、同時に別の世界への入り口を示しているようでもある。帰国後もたくさん写真を撮り続けフェースブックに投稿しているので写真をきちんと修行すればというアドバイスしてくださる先輩諸氏もいらっしゃるが、自分としてはレンズを通して見えてくる被写体としての世界のほうにより興味をもっている。わたしが同郷のカメラマンである倉重義隆氏の写真集「43年の夢 ふるさと栃尾の日々」に強く魅かれるのもそういう理由からだと思う。画像そのものではなく、そこに映りこむ心象風景に興味があるのだと思っている。

吉田健一という英文学者の書いた「英国に就て」という本の中に、堀辰雄が「狐の手袋」という題の随筆集を出していたことが書かれている。この花はとても気に入ったので、わたしのブログのカバー写真にもなっている。近所の教会と狐の手袋が対峙している写真だ。これまで見たもっとも美しい群生地はウィンブルドンの全英オープンテニスの会場だった。吉田健一は「紫がかった色の花」と紹介しているが、いろいろな色がある
。イザベラ植物園にも、ホランド・パークにも咲いていた。英国の妖精の絵にも登場する謎めいた花だ。日本では「ジギタリス」という名前で園芸種として知られている。不思議な形と色彩なのでじっと見ていて飽きない。この花については別にノートを書いている。

 

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