ロンドンを訪ねてくれた旧友と一緒にグリニッジの天文台を訪れた。テムズ川の遊覧船がグリニッジの埠頭につくと、目の前のカティサーク号の左隣に海洋博物館があった。常設展をさらっと見てから、丘の上にある天文台を訪れた。世界の東西の出発点である子午線の上で記念写真を撮り、天文台の建物の中に入ると公式ガイド女史が外人さんたちに説明していた。こちらも耳を傾けていると、その人が日本語で話かけてきた。在英の日本人女性だった。5年前に応募して天文台で働くようになったそうだ。話が弾んで40分ほどの特別講義を聞くことができた。
海洋博物館の特別展の意義について教えてもらったので帰り道に寄ってきた。欧州各地から見学者が訪れているという特別展は海洋博物館地下で開かれていた。徒然草の「何ごとにも先達はあらまほしきものなり」とは良く言ったものだ。とても貴重な展示を見逃すところだった。特別展の目玉はジョン・ハリソンという時計職人が作った世界初の航海用クロノメーターの本物だ。グリニッジが帆船カティサーク号と天文台と世界標準時の3つで有名なように航海術と星を見て位置を知る技術と正確な時間を知る技術の間には重要な関連がある。
300年前の1714年に英国は実用的で人々の役に立つ発明を表彰する制度を作っている。1765年に航海用クロノメーターを発明したジョン・ハリソンが受賞した。この発明により世界の航海技術は飛躍的に発展し、東西貿易、文化交流が進んだ。列強による植民地獲得競争が進み18世紀以降の人類の歴史は大きく変わった。航海術に優れた大英帝国は「陽の沈まない帝国」となり帝国主義の時代をリードした。奴隷貿易は多くのアフリカ人を各地に運んだ。アヘン貿易はユーラシア大陸に大きな影響を与えた。新しい発明は常に陰と陽の両方をもたらす。原子力利用技術がわかりやすい例だ。
英国では今年longitude challengeというイベントが開かれている。2014年の夏に「現代の人類にとって航海時計の発明と同じくらいのインパクトで人類の未来を変える発明は何か?」というテーマでアンケートが行われた。「環境に悪影響を与えない飛行技術?」「人類が必要とする清潔な水を確保する技術?」「痴呆症を直す技術?」「マヒした身体を直す技術?」などを抑えて「抗生物質に対する耐性を克服する技術?」が最もインパクトのある発明のテーマとして選ばれた。11月18日からこのテーマへの回答の応募受付が始まる。賞金は1000万ポンドで応募の締め切りは2020年。どんな発明が生み出されるのだろうか?
http://www.bbc.co.uk/news/science-environment-28027376
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